★エンジンオイルについて
- Vol.1【動粘度、API規格、粘度指数ってなに?】
- Vol.2【ベースオイル/役割とは】
- Vol.3【耐久性と保護性能】
- Vol.4【2022年夏更新予定】
─おわび─
前回より半年以上経ち、ほったらかしていました。2022年5月現在、このブログで一番アクセスされているにもかかわらず更新を怠ってしまい申し訳ございませんでした。
記事の内容に誤りのないようじっくり書きましたのでぜひゆっくりご覧ください。
■目次
●エンジンオイルの役割とは
●ベースオイル一覧
●グループI、グループII【鉱物油】
●グループIII【VHVI】
●グループIV【PAO】
●グループV【ESTER】
●さいごに/次回
■エンジンオイルの役割とは
Vol.1の動粘度、API規格、粘度指数ってなに?にメモし忘れたのでおさらい。そもそもこの記事に辿り着いた方ならわかっているとは思いますが...僕は以下の5つが大切だと考えています。
- 冷却作用
- 潤滑作用
- 密封作用
- 防錆作用
- 清浄作用
(参考→エンジンオイルの役割とは?エンジンオイル交換時期の目安も解説 | イエローハット)
正直どの役割も大切ですが、一般的な「油」と異なるのは洗浄作用だと思います。ギヤ(デフやトランスミッション)やダンパーにも潤滑や密封などは大切です。しかし燃料を燃焼してエネルギーを生み出すのはエンジンのみ。つまりエンジンは燃えカスである「スラッジ」が発生したり、それが高温にさらされることでエンジンにこびりついてしまう可能性があります。それをしっかりと落としていく、溜めないようにするには「清浄作用」が大切です。長くエンジンを使いたい方にはぜひこだわってほしいポイント。今回の内容とは遠いようで近いポイントになります。
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■ベースオイル一覧
こちらも動粘度のようにAPI(アメリカ石油協会)にて決められており、5つに分類されます。
グループI | グループII | グループIII | グループIV | グループV | |
一般的な呼称 | 鉱物油 | 鉱物油/部分合成油 | 全合成油 | 100%化学合成油 | 100%化学合成油 |
種類 | VHVI | PAO(ポリαオレフィン) | エステル等 1-4に属さないもの |
||
原油の処理方法 | 溶剤精製 | 水素化分解 | 水素化分解 | 化学合成 | 化学合成 |
粘度指数 | 80-119 | 80-119 | 120以上 |
参考→第2編第2章第1節 総説|石油便覧−ENEOS、エンジンオイルのベースカテゴリ分類について 【通販モノタロウ】
ここからはざっくりしたイメージ!
- 鉱物油→1or2
- 部分合成油→2と3のミックスor2のみ
- 全合成油→3のみ
- 化学合成油→3、4、5のミックスor4、5のみ
なのがお店に置いてあるエンジンオイルの大半を占めると思います。
以下、それぞれの特徴を説明していきたいと思います。
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■グループI、グループII【鉱物油】
かなり極端にいうと「原油の粘度のある部分をそのままエンジンオイルにしました。」というイメージ。分子の大きさが不均一ですが、加工などをほぼしていないため価格としては一番安いです。オイルとしての役割も最低限これくらいは...といったレベルの製品が多いかもしれません。
このエンジンオイルは現代のクルマには向いていないです。しかし1980年代より前に製造された自動車、いわゆる「旧車」にはこのエンジンオイルを使用することをおすすめします。
旧車における鉱物油のメリットとして、ガスケットへのダメージが少ないためオイル漏れを起こしにくいです。シール攻撃性とも呼ばれたりします。逆に化学合成油を使ってしまうとシールへの攻撃性が強かったりエンジン内部のコーティングが剥がれ落ちる、など性能が高い故にトラブルを起こしてしまいます。
現代の自動車、APIですとSM級以上を指定しているようなクルマでしたら気にせず化学合成油が使用できると思いますので、鉱物油より性能の高いVHVIや化学合成油の使用を勧めたいです。
★まとめ★
鉱物油→旧車におすすめ!
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■グループIII【VHVI】
このベースオイルは賛否両論あるベースオイル(笑)
鉱物油(グループ1や2)と比較してかなり性能が向上しています。精製方法は鉱物油を「水素化精製処理」をすることでPAOやエステルに近い性能が安価で提供されているのが魅力。ハイドロクラッキングオイルなんで呼ばれたりも。
賛否両論あるのは「このVHVIは化学合成油なのか鉱物油なのか」って話。カー用品店でよく売ってる大手2社があーだこーだ訴訟問題に発展して結局「VHVIは化学合成油」になったわけですね。僕は心の中で「PAOやエステルに近い鉱物油」と思っていますw
大抵のメーカーで化学合成油や合成油はほとんどこのVHVIがベースとなっていて添加剤を加えたり性能向上のためグループ4のPAOやグループ5のエステルを配合したり...
僕がこの2年近くで使った中ではTAKUMIのHighQualityはベースオイルがVHVI(TAKUMIではHIVI表記)ですね。使った印象は「必要十分」といった印象でガンガンエンジンを回していく用途にはあまり向いていないものの、たまにガンガン走るような使い方や街乗りだけの方には非常にお勧めできるオイルです。
★まとめ★
- 鉱物油よりワンランク上の商品を使いたい方
- 街乗りメインの方
- たまにワインディングを元気よく走る方
■グループIV【PAO】
個人的には使っているオイルに入っていると嬉しいなって思えるベースオイルです。PAOはポリ-α-オレフィンとも言われ、有名なのはM○bil社のエンジンオイルですね。
メリット・デメリットは以下のような感じ。
- 粘度指数が高い(流動性が良い)
- 耐久性が高い
- シール攻撃性がある
- 価格が高い
僕がこの中でいいなと思えるのは流動性の良さと耐久性。と言うのも僕は北海道在住なので冬は-15℃近くからエンジンを始動することもあります。オイル交換も学生なのであまり時間が取れない期間もあったりします。なので安心して4000kmから5000kmでオイル交換できる・最後までしっかり性能を保つことができるベースオイルはこのPAOだけなのかと思っております。
今まで使ってみたMobli1 5w-40やGulf Arrow GT50 10w-50はやはり他のエンジンオイルと比較して3000km以降のオイルのヘタリが緩やかでした。あくまで個人の感想ですが...
シール攻撃性についてはエステルや添加物との併用であまり影響のないよう工夫されていますので我々はあまり気にする必要がないかと思われます。
★まとめ★
耐久性や流動性に優れているので車を大切にしたい方におすすめ!
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■グループV【Ester】
これで最後になります!高級なベースオイルであるエステル。オイルとしての潤滑性能が優れていますがオイルに含まれている添加剤との相性が悪いなどちょっとしたデメリットも。シール類を膨張する作用もありPAOと組み合わされて販売されている製品が多いかと思います。あとはPAOと比べて価格が高いなんてデメリットも。
実際のところ市販されているエンジンオイルには含まれていなかったり少量しか入っていないことが多いです。ですが、サーキットやラリーなどで使う競技向けのメチャクチャ高級なオイルには贅沢に入っていたりします。(4Lで1万円以上するようなオイルとかですね...)
★まとめ
競技をする方/エンジンをメチャクチャ労りたい方におすすめです!
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■さいごに/次回
注意点ですが、エンジンオイルはベースオイルだけで構成されているのではくその他添加剤と組み合わされて製品化されています。ベールオイルが優れているからといって性能が高い訳ではなく、その逆に部分合成油でも性能の良いエンジンオイルも市場には存在します。なのでベースオイルだけでエンジンオイルを選定するのではなく、総合的に判断していただければと思います。
もしなにかございましたらお問合せ欄からご連絡いただければと思います。そして「このクルマにはこのオイル」みたいな話はご自身で適合しているか確認をお願いします。ご自身のクルマについてはご自身で責任を持っていただければと思います。
さて、次回以降についてですが4本立てのこの企画の3つ目、【耐久性/密閉性/保護性能】これらについて書いていこうと思います!それでは!!
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★前回の内容